セル画の歴史
2016年11月11日
セルアニメというのをご存知でしょうか。セルという名前のキャラクターが登場するアニメという意味ではありませんよ。セルという名前の画材を用いて再生されるアニメの事を指します。かつては日本で当たり前のように使われていた形式のアニメです。セルアニメの絵をセル画と呼びます。なぜかつてなのか?なぜなら今では全くと言っていい程、セルアニメとセル画は使われていないからです。今ではCG技術で描かれたデジタルアニメが放送されているアニメが主流です。今回はセルアニメの説明と歴史を紹介したいと思います。
セルという画材は透明なシートです。そこに線画を描き、それから色を専用塗料で塗って着色します。アニメにする際は背景を描いた紙の上に、数枚のシートを重ね、動きのある部分のみを差し替えて、16ミリや35ミリフィルムで撮影するなどの方法で利用されます。
線画と着色、どちらの段階でも専門の知識と技術が必要となり、アニメ大国の日本ではセル画のアニメーターが数多くいました。しかし、1990年代を境にアニメ業界に大きな変革が起こります。この時代にセル画を用いず、専用機材を導入してデジタル彩色で作られたアニメ、所謂デジタルアニメの登場です。デジタル彩色はこれまでのアニメーション技術、特に彩色に掛かっていた大きな負担を軽減させるというメリットが有りました。例えば広範囲のベタ塗りなどはデジタル彩色なら塗料無しでマウスのクリックで完了する、などです。またデジタル彩色の導入により、色数の制約も事実上なくなりました。
1990年代後半から2000年代前半はCGとセル画のパートをそれぞれ用意して編集して一本の作品に仕上げる手法も取られるようになりました。セル画とデジタルを併用していた頃です。ですがそれ以降はセルアニメはデジタルアニメに淘汰されるようになっていきます。
その後、あらゆるアニメがデジタルアニメの一本化を進めて、最後にセルアニメを使っていたアニメは皆さんご存知のサザエさんです。今ではサザエさんもデジタルアニメです。こうしてセルアニメはサザエさんを最後に現行のテレビアニメから、すべて姿を消すことになります。今ではセル専用の画材や機材も貴重です。セル画の技術しか持たないアニメーター自身も一気に淘汰される結果となりました。
こうして90年代まで日本のアニメ業界を支えつづけてきたセルアニメは終焉を迎えてしまいました。