「粉体塗装」ってなんでしょうか
2015年1月16日
以前「粉体塗装は環境に配慮された方法です」というような内容の記事を見た事があります。
塗装というと「臭いがキツイ」「種類や混ぜ合わせ方など素人にはムリ」「道具や養生が専門業者でないとできない」というイメージがあります。
今では「多種多様な塗料」が素人でもカンタンに揃えられます。
(モチロン “腕の差” でできあがるモノの違いは出ます)
しかし専門家がやっても素人がやっても同じな物があります。
それは「VOC」といわれる環境破壊に影響を及ぼす「揮発性有機化合物」の排出です。
あの塗料独特の「有機溶剤臭」いわゆる “シンナー臭” です。
この臭いの原因となっている成分は、トルエン、ベンゼン、キシレン、フロンなどが主です。
これらの有機化合物は簡単に空気中へと揮発してしまうので厄介な存在となっています。
深刻な「大気汚染」「オゾン層破壊による温暖化」「シックハウス症候群(※)」を引き起こしてしまいます。
(※):シックハウス症候群 – – – VOCとは別の原因物質が含まれるため、VOCだけが原因とはされない場合があります。
*** VOCは抑えることはできるの? ***
一般的な溶剤性塗料ですと「約50%」が塗膜として残りますが「残りの成分」は揮発して大気中へと放出されてしまいます。
工場などで使用されている塗料はきちんと「産業廃棄物」として処分されているのですが、使用されている全ての塗料がこういったサイクルを経ている訳ではありません。
*** 粉体塗装ならどうなるのか? ***
このVOCを全く使用しない「粉体塗装」をすればもちろん大気への放出は一切ありません。
成分に「顔料」「樹脂」「硬化剤」などを使用していて有機溶剤が要らないのです。
樹脂系の材料を使用しているので「1度の作業で均等に塗装できる」ことと、溶剤系塗料では難しかった「厚塗り」ができます。
(溶剤系では、厚く塗るとムラになりやすい、作業に時間がかかるなど面倒な点があるそうです)
また法規制上の「危険物取扱い対象」ではないので、特別な保管や取扱いも必要ありません。
1回の作業での塗膜厚は「一般溶剤系塗料で約30μm」という厚さですが「粉体塗装では約2倍の80μm」までの作業が可能となります。
作業回数が増えれば使用する材料も廃棄する材料も多くなるでしょうね。
「溶剤」は回収して “産廃” とされますが、「粉体」は回収して “再利用” できるのが一番のメリット(コスト削減)に繋がります。
一般にあるスプレーは「コンプレッサー」によりエアーを噴出しますが、粉体塗装では電荷を持たせ(帯電させ)吸着、焼き付け処理する方法や加熱した材料を塗料に浸す方法もあります。
溶剤系では気候の変動や調色時にはその都度絶妙な調合などが必要ですが、粉体塗装なら一定した品質で作業できます。
ごく一般に使用されているインクや接着剤の成分にも、また工場での製造工程にある「洗浄作業」でも溶剤は使用されています。
主に塗料を扱う「業種・作業」でVOCの排出全体の約40%を、これらに接着剤や洗浄剤を含めると75%を占めることになってしまいます。
粉体塗装のように「全てゼロ」というのは難しいでしょう、でも極力出さない事もできるのならそうしたいものですね。