中小企業だからこそできる技術
2015年9月15日
「手作業(アナログ)」にはデジタル化された機械にはない対応力があります
モノづくりで肝心なのは大量に製造することだけではなく、どの製品も同じ品質・性能であることではないでしょうか。
大企業でなければ「革新的な設計」「質の良い原料・部材調達」などはできないことは確かです。
しかしその先の生産・加工などは中小企業などが担っているのです。
大量に生産する仕組みを確立してしまえば大人数の工場や施設には敵いません。
でもその仕組みの元となるパーツのレベルまで遡れると大工場にはない技術力が見えてきます。
例えば “パラボラアンテナ”を手作業で仕上げる「ヘラ絞り」という技術はテレビでもよく取り上げられています。
薄い円盤状の鉄板を回転させてそこへ職人さんが「ヘラ(ローラー)」を押し当てて徐々に加工していくという技術です。
材料も「鉄」「アルミ」「ステンレス」から金・銀も扱うことができるそうです。
*** この方法の優れているポイントは…
素人が見ると「この作業、プレスでポン!と作れないの?」と思ってしまいます。
同じ形状の製品をプレスしてみると、材料の金属にも「曲げ」「穴あけ」などの加工箇所に負担がかかります。
いっぺんに加工してしまおうとすると、肝心な箇所で「歪み(加工箇所のズレ)」「クラック(破断・ヒビ)」「戻り(曲面[アール]・曲げ部分などの寸法違い)」などといった不具合がでてきてしまいます。
部分的な狂いは最終的には全体への狂いとなってしまいます。
機械作業で出来上がればたしかに効率的ですがそういった特性も考慮に入れなければなりません。
このような作業であれば機械で効率よく形作りをして、別作業で「修正・調整」をすれば同じようなモノができるかもしれませんが、見込んでいた生産効率に適っているのでしょうか?
また、手馴れた作業者になれば、作業をしながら修正や変更ができるのです、手作業でのメリットはそこにあるのです。
一つ一つキチンと仕上げていくのなら「手作業」のほうが”品質”も”効率”も良いのかもしれませんね。
某世界的メーカーの本体の研磨を「新潟県」の町工場が一手に担っていたこともそういった「手作業」による臨機応変な対応力がモノをいわせたのかもしれません。
機械でいっぺんに打ち抜き・カタチを整え・まとめてバリを取り・同じ設定の機械で研磨していては最高のクオリティは実現できないこともあります。
また最近話題の「痛くない注射針」は、”従来の注射針でも平気!!” という人なら気になりませんが “見ただけでもツライ” という人には救世主です。
入院で毎日「点滴」や「注射」をしなければならない患者さんや、小さなお子さんにも喜ばれる技術でしょう。
こんなものがあったら良いなというモノは思い浮かべることはできても「カタチ」にするのはむずかしいことです。
さらに精密で小型の製品・部品が多くなることでさらに細かいステージへと技術がシフトしています。
「○mm」というサイズから「手触りで感じる」というような微妙なレベルを求めていくのでしょうか。
ユーザーの皆さんも「誤差の範囲内であれば使用には問題ない」という時代から「目に見えないほどの違いも気にする」ナノテクノロジークラスの目を持ち、求める精度・性能ははるかにレベルアップされています。
作り出していく側もそのリクエストに応えていく”あったらいいなぁ”をカタチにできる「反応の速さ、安定した技術」がさらに求められてきます。
だからこそ小回りの利く「中小企業」の活躍が必要になるのでしょう。